市川沙央 / ハンチバック

2023年6月30日初版 文藝春秋    
芥川賞受賞作は重度障害者の激しい思い叩きつける衝撃作。グループホーム所有し財産面で恵まれてもエロライター仕事に精を出す主人公の釈華の暴走強烈でヒリヒリする展開。ネット住人の振る舞い巧みに描く力量見事。

石井幸孝 / 国鉄――「日本最大の企業」の栄光と崩壊

2022年8月25日初版 中公新書
JR九州社長務めた著者による詳細な38年の歴史に興奮。ディーゼル車の技術的解説難解も国鉄内部の興味深いエピソード満載。国会承認必要な公共企業体の限界、労使問題も触れて、JR三島会社の難しさ指摘も鋭い。

滝口悠生 / 水平線

2022年7月25日初版 新潮社
硫黄島に生きた人々と子孫の戦後の日常切り取り500頁の大作が会心。戦前の島の日々と現代生きる兄妹のコントラスト見事。コロナ禍の小笠原行き、滞在時の不思議な出会い、過去の人と繋がるファンタジーも効果的。

岡田利規 / ブロッコリー・レボリューション

2022年6月30日初版 新潮社
15年ぶり第2小説集は08~22年発表の5編収録で様々な企み見事。三島賞の表題作は家を出てタイ旅する女性を夫の視点で描き、途中に説明追加する文体も面白く新鮮。原発事故やコロナ禍など背景入れ方もうまい。

梯久美子 / この父ありて 娘たちの歳月

2022年10月30日初版 文藝春秋
女性作家の父娘関係焦点の9品は戦中戦後の足跡描いて持ち味。二・二六事件に運命翻弄された渡辺和子、斎藤史の対比強烈。興銀で働き家族を養う石垣りんの姿に興奮。萩原葉子の父・朔太郎と係累の大胆行為も衝撃的。