2023-09-07 高瀬隼子 / いい子のあくび PRINT 2023年7月10日初版 集英社 芥川受賞第一作集は鋭さ抜群。歩きスマホへ怒り貯める優等生女子の暴走描く20年発表の表題作は婚約相手勤務先の学校でのSNS覗き見面白く展開見事。創業者像にお供えすると願い叶う社内都市伝説描く小篇も流石。
2023-08-10 川上未映子 / 黄色い家 PRINT 2023年2月25日初版 中央公論新社孤独な少女の稼ぐことへの執着と闘い描き圧倒的スピード感。黄美子さんと出会い、三茶でスナック始める展開見事で、同世代3人での共同生活も臨場感。90年代後半の時代性も映すノンストップなノワール小説に興奮。
2023-07-20 市川沙央 / ハンチバック PRINT 2023年6月30日初版 文藝春秋 芥川賞受賞作は重度障害者の激しい思い叩きつける衝撃作。グループホーム所有し財産面で恵まれてもエロライター仕事に精を出す主人公の釈華の暴走強烈でヒリヒリする展開。ネット住人の振る舞い巧みに描く力量見事。
2023-06-07 石井幸孝 / 国鉄――「日本最大の企業」の栄光と崩壊 PRINT 2022年8月25日初版 中公新書JR九州社長務めた著者による詳細な38年の歴史に興奮。ディーゼル車の技術的解説難解も国鉄内部の興味深いエピソード満載。国会承認必要な公共企業体の限界、労使問題も触れて、JR三島会社の難しさ指摘も鋭い。
2023-05-15 滝口悠生 / 水平線 PRINT 2022年7月25日初版 新潮社硫黄島に生きた人々と子孫の戦後の日常切り取り500頁の大作が会心。戦前の島の日々と現代生きる兄妹のコントラスト見事。コロナ禍の小笠原行き、滞在時の不思議な出会い、過去の人と繋がるファンタジーも効果的。
2023-04-25 岡田利規 / ブロッコリー・レボリューション PRINT 2022年6月30日初版 新潮社15年ぶり第2小説集は08~22年発表の5編収録で様々な企み見事。三島賞の表題作は家を出てタイ旅する女性を夫の視点で描き、途中に説明追加する文体も面白く新鮮。原発事故やコロナ禍など背景入れ方もうまい。
2023-03-30 梯久美子 / この父ありて 娘たちの歳月 PRINT 2022年10月30日初版 文藝春秋女性作家の父娘関係焦点の9品は戦中戦後の足跡描いて持ち味。二・二六事件に運命翻弄された渡辺和子、斎藤史の対比強烈。興銀で働き家族を養う石垣りんの姿に興奮。萩原葉子の父・朔太郎と係累の大胆行為も衝撃的。