2023-01-01から1年間の記事一覧

山田詠美 / 私のことだま漂流記

2022年11月21日初版 講談社毎日新聞日曜版連載の自伝小説は磐田の幼少期、鹿沼の文学少女時代、漫画家や新宿・六本木時代、作家デビューから文壇状況まで軽妙に綴り文句なしの面白さ。各種攻撃による痛みが鮮明、先輩作家との交流も興味深い。

劇場版 SPY×FAMILY CODE: White

2023年12月23日 109シネマズ二子玉川TVアニメ放送中でもオリジナルストーリーで実現の映画版は軍絡むスケールでかめな展開が奏功。飛行艇でのアクションはベタでも見せ場たっぷり。アーニャの我慢シーンも爆笑。特典の小冊子がこだわり満点で嬉しい。

城山羊の会 / 萎れた花の弁明

2023年12月13日19:00 三鷹市芸術文化センター星のホール三鷹の劇場舞台の新作は岡部たかし&ひろき親子を親子設定でメタ構造が痛快。元妻が混線、父と子に愛される女性を村上穂乃佳が好演。謎のエロオヤジ役の岩谷健司が若者慰める展開面白く、大詰めの親子…

津村記久子 / 水車小屋のネネ

2023年3月5日初版 毎日新聞出版谷崎賞受賞の新聞小説が会心。10歳違いの理佐と律の姉妹が毒親から離れ生活始める展開見事。職場の蕎麦屋にいるヨウム=ネネとの交流を10年単位で見つめ、時代背景の挿入、コミュニティの強まりも巧みに描いた。

KAAT×東京デスロック×第12言語演劇スタジオ / 外地の三人姉妹

2023年12月8日14:00 KAAT神奈川芸術劇場<大スタジオ>ソン・ギウンと多田淳之介が組んだコロナ禍初演作再演は30年代の朝鮮北方の羅南舞台に伊東沙保、李そじん、原田つむぎの3姉妹が機能。チェーホフ原作に戦中日本の姿重なり、当時風俗巧みに挿入し絶妙の…

松本大洋 / 東京ヒゴロ

2021年9月-23年11月初版 小学館ビッグコミックスペシャル全3巻完結は大手出版社辞めた漫画編集者の真摯な生き様描き会心。ノスタルジックな風景描写、芸術性高い各絵に興奮。漫画家の人間模様も絶妙で、長作が別居中の娘と藤沢から作家の個展に出かける回な…

スペースノットブランク / 松井周と私たち

2023年11月26日13:30 こまばアゴラ劇場小野彩加と中澤陽が松井周を迎え3人で話す舞台が新鮮。インタビュー形式で展開も途中からワークショップ的動き加わり面白い。サンプル立ち上げ時の思い出話も面白いが、独自メソッドのダンスなど3人で披露し会心。

バストリオ / 一匹のモンタージュ(リクリエーション)

2023年10月17日14:30 こまばアゴラ劇場水や土まき散らしポップに昇華で流石のバストリオ世界。時事性も潜ませ成功。演奏だけでなく独白シーンでも本藤美咲が存在感発揮。序盤大人しめだった橋本和加子も中盤から躍動で魅力炸裂。スカンクもしっかり演技。

排気口 / 時に想像しあった人たち

2023年10月3日19:30 三鷹市芸術文化センター星のホール若手劇団新作はフレッシュな役者揃えた商店街集会所舞台の群像劇で脱力感全開。暴走しスベりまくる中年男優陣に唖然も、龍村仁美、東雲しの、倉里晴らボランティアサークルの女子大生演じた女優陣の躍動…

ぱぷりか / 柔らかく揺れる

2023年10月3日14:00 こまばアゴラ劇場岸田作再演は広島に暮らす一族の日常の様々描きながら現代映す縮図見せて感嘆。初演から役者総入れ替えでも男性不妊やギャンブル依存、LGBT、シングルマザーなど重厚テーマを一つ一つ丁寧に描き見事な仕上がり。

児玉雨子 / ♯♯NAME♯♯

2023年7月30日初版 河出書房新社ハロプロ作詞家の芥川賞候補作はジュニアアイドルだった過去と大学生の現在往来し強烈で過去バレの苦痛リアル。オーディション続いた小学生時代の美砂乃との交流が臨場感。るろうに剣心な二次創作オフも意外な効果。

ヨーロッパ企画 / 切り裂かないけど攫いはするジャック

2023年9月30日18:00 本多劇場1年ぶり新作は19世紀末のロンドン舞台に推理しまくりミステリーコメディで攫うジャック巡る前半見事で藤松祥子演じた花売り娘の明転など巧みも終盤暴走感。進行役で永野宗典が笑い引き出し成功。藤谷理子も成長。

阿部和重 / ULTIMATE EDITION

2022年10月30日初版 河出書房新社有名曲のタイトルと同名作中心に16作品集めた短編集は持ち味十分。追い込まれた極限状況を巧みに表現して迫力。前半は旧共産圏中心にグロい作品並ぶ。後半は東京西部や神奈川のプチ犯罪、事件の一コマ描き切れ味。

あひるなんちゃら / 真夜中にコライダー団地で

2023年9月28日19:30 駅前劇場地下にコライダーあるロケット団地舞台に複数組の会話が交互に展開し持ち味。額にシール貼る者の存在、部屋、廊下、公園、屋上と次々舞台変え団地の情景に厚み。もはや老舗劇団で役者平均年齢上昇、若手起用必要か。

ヤマザキマリ、とり・みき / プリニウス

2014年7月‐23年7月初版 新潮社(バンチコミックス)2000年前のローマ舞台に「博物誌」著したプリニウスやネロなどの生き様描く意欲作が全12巻で完結。「新潮45」から「新潮」へ掲載誌移しつつ圧倒的な描写力維持。地中海沿岸諸国進む一行のキャラも立ち成功。

高瀬隼子 / いい子のあくび

2023年7月10日初版 集英社 芥川受賞第一作集は鋭さ抜群。歩きスマホへ怒り貯める優等生女子の暴走描く20年発表の表題作は婚約相手勤務先の学校でのSNS覗き見面白く展開見事。創業者像にお供えすると願い叶う社内都市伝説描く小篇も流石。

ろりえ / 下北沢の駅前でやる祭り2023夏(「かわいい妹」「ネタ書いてる方芸人とラストイヤーイマジネイションズ」他)

2023年8月27日14:00 駅前劇場祭りというだけあり盛りだくさん大増量オムニバス公演。不気味な花火の一夜描く福名理穂の新作いいが、崖っぷち芸人たち描く奥山雄太新作が素晴らしく荒井玲良の魅力爆発。歌手でも登場の安藤理樹の多才ぶりに感服。

川上未映子 / 黄色い家

2023年2月25日初版 中央公論新社孤独な少女の稼ぐことへの執着と闘い描き圧倒的スピード感。黄美子さんと出会い、三茶でスナック始める展開見事で、同世代3人での共同生活も臨場感。90年代後半の時代性も映すノンストップなノワール小説に興奮。

市川沙央 / ハンチバック

2023年6月30日初版 文藝春秋 芥川賞受賞作は重度障害者の激しい思い叩きつける衝撃作。グループホーム所有し財産面で恵まれてもエロライター仕事に精を出す主人公の釈華の暴走強烈でヒリヒリする展開。ネット住人の振る舞い巧みに描く力量見事。

NODA・MAP / 兎、波を走る

2023年7月4日19:00 東京芸術劇場プレイハウス高橋一生人気過熱公演はアリス、ピーターパンから始まる異世界への旅。三里塚、よど号から北朝鮮へ、松たか子が娘待つ親好演。不条理劇と謳うも時事的切り口強め。大倉&野田で演じた劇作家2人の作家性強烈で笑…

石井幸孝 / 国鉄――「日本最大の企業」の栄光と崩壊

2022年8月25日初版 中公新書JR九州社長務めた著者による詳細な38年の歴史に興奮。ディーゼル車の技術的解説難解も国鉄内部の興味深いエピソード満載。国会承認必要な公共企業体の限界、労使問題も触れて、JR三島会社の難しさ指摘も鋭い。

滝口悠生 / 水平線

2022年7月25日初版 新潮社硫黄島に生きた人々と子孫の戦後の日常切り取り500頁の大作が会心。戦前の島の日々と現代生きる兄妹のコントラスト見事。コロナ禍の小笠原行き、滞在時の不思議な出会い、過去の人と繋がるファンタジーも効果的。

バストリオ / ちちち

2023年5月2日14:30 SCOOL第11回公演は山下澄人「壁抜けの谷」原案に出演者共作のパフォーマンスで持ち味十分。空間内にペインティングや演奏など多様な要素盛り込み、水の使い方も効果的。橋本和加子が牽引だが枠組みはみ出す試みに拍手。

岡田利規 / ブロッコリー・レボリューション

2022年6月30日初版 新潮社15年ぶり第2小説集は08~22年発表の5編収録で様々な企み見事。三島賞の表題作は家を出てタイ旅する女性を夫の視点で描き、途中に説明追加する文体も面白く新鮮。原発事故やコロナ禍など背景入れ方もうまい。

梯久美子 / この父ありて 娘たちの歳月

2022年10月30日初版 文藝春秋女性作家の父娘関係焦点の9品は戦中戦後の足跡描いて持ち味。二・二六事件に運命翻弄された渡辺和子、斎藤史の対比強烈。興銀で働き家族を養う石垣りんの姿に興奮。萩原葉子の父・朔太郎と係累の大胆行為も衝撃的。

末次由紀 / ちはやふる

2008年5月~22年12月 講談社BE-LOVEKC百人一首に取り組む高校生たち描いた傑作が50巻で完結。綾瀬千早の魅力抜群だが、脇役キャラの掘り下げも巧みで、クイーン戦でも随所に大会関係者の群像劇挿入し圧巻。部の創設から継承にも目配りした構成も見事。

沢木耕太郎 / 天路の旅人

2022年10月25日初版 新潮社9年ぶり長編ノンフィクションは1940年代に中国からチベット、インドを旅した西川一三の足跡を丁寧に追い抜群の面白さ。西川の住む盛岡に通った冒頭から執筆に至る前段見事。戦中のラマ僧での冒険の日々も興奮。

ナイロン100℃ / Don't Freak Out

2023年3月14日14:00 ザ・スズナリ久しぶりのスズナリでの本公演は松永玲子&村岡希美をW主演に戦前の屋敷・女中部屋を舞台に悲劇、惨劇描いて持ち味。顔白塗りで笑い控えめでも不気味な可笑しさ醸してうまい。姉妹働く異常空間で狂気が冴え渡った。

ブラッシュアップライフ

TV

2023年1月8日~3月12日22:30 日本テレビバカリズム脚本×安藤サクラ主演のタイムリープコメディは公務員、TV局社員、研究医、パイロットなど各周の人生リアルで大成功。夏帆、木南晴夏、水川あさみとの女子の友情、時代映す雑談奏功。染谷将太もいい味。

佐藤厚志 / 荒地の家族

2023年1月20日初版 新潮社仙台の書店員作家の新作は阿武隈河口付近舞台に植木屋の日常描いて会心。津波による被害後も続く悲劇がリアルで重く芥川賞受賞も納得。逃げた妻を追う男の苦悩、震災で一変した故郷の風景、旧友の没落強烈で震える。