COMIC

九井諒子 / ダンジョン飯

2015年1月~23年12月初版 KADOKAWA(BEAM/HARTA)全14巻で完結の異色グルメ漫画は冒険するマルシル、センシら4人のキャラ立ちよく大成功。ダンジョンの階層ごとに現れる魔物の変化、終盤投入の猫娘も機能し、料理場面念入りでRPGな世界観に絵心も冴えて感嘆。

山本さほ / てつおとよしえ

2023年4月26日初版 新潮社自身の父と母を描く「小説新潮」連載マンガはラジコンなど趣味多く機械オタクな父と心配性で機械オンチの母のキャラ立ちよく、幼少期やデビュー前後の思い出話もよく見事なノスタルジー。持ち味発揮で嬉しい一冊。

松本大洋 / 東京ヒゴロ

2021年9月-23年11月初版 小学館ビッグコミックスペシャル全3巻完結は大手出版社辞めた漫画編集者の真摯な生き様描き会心。ノスタルジックな風景描写、芸術性高い各絵に興奮。漫画家の人間模様も絶妙で、長作が別居中の娘と藤沢から作家の個展に出かける回な…

ヤマザキマリ、とり・みき / プリニウス

2014年7月‐23年7月初版 新潮社(バンチコミックス)2000年前のローマ舞台に「博物誌」著したプリニウスやネロなどの生き様描く意欲作が全12巻で完結。「新潮45」から「新潮」へ掲載誌移しつつ圧倒的な描写力維持。地中海沿岸諸国進む一行のキャラも立ち成功。

末次由紀 / ちはやふる

2008年5月~22年12月 講談社BE-LOVEKC百人一首に取り組む高校生たち描いた傑作が50巻で完結。綾瀬千早の魅力抜群だが、脇役キャラの掘り下げも巧みで、クイーン戦でも随所に大会関係者の群像劇挿入し圧巻。部の創設から継承にも目配りした構成も見事。

藤本タツキ / さよなら絵里

2022年7月9日初版 集英社母の死に向かう日々を映像に残し公開した少年が出会った謎の女の子、絵里との交流を得意のタッチで描いて成功。映画のようなコマ割り効果的で、2人が新たに始める映画づくりが強烈。全体に漂う死のムードもマッチ。

卯月妙子 / 鬱くしき人々のうた 実録・閉鎖病棟

2021年9月28日初版 太田出版統合失調症を患い二十代の精神科長期入院生活を描いた未完作が気力の執筆再開で見事完成。自らのきつい日々の生々しいドキュメントに加え、入退院する患者たちの横顔を興味深いエピソードとともに紹介し迫力の一冊。

魚豊 / チ。――地球の運動について――

2020年12月~22年7月初版 小学館ビッグコミックス全8集完結の地動説巡る中世物語は異端尋問官による残酷なシーン連発で目覆うが禁忌破る真理求める者たちの姿に感動。主役級の人物が次々倒れ時代が流れる展開が新鮮、神の存在大きく価値観の異なる世界が興…

藤本タツキ / ルックバック

2021年9月3日初版 集英社ジャンプコミックス小学校の学年新聞の漫画欄埋めた藤野と京本の学友女子2人がコンビ組みプロを目指す筋立てよく、吹き出しなしで制作に取り組む姿描くコマたち効果的。美大に進んだ元不登校少女の悲劇巡るパラレルワールド展開迫力…

益田ミリ / スナックキズツキ

2021年1月28日初版 マガジンハウスドラマ化も成功した7年ぶり描きおろし作はコールセンターで働く「ナカタさん」から店主の「トウコ」まで傷ついた人たちの輪。市井の人たちの日常の些細な傷つきポイントを丁寧に拾い感嘆。各回終盤の仕掛け面白い。

奈良崎コロスケ / 音楽とおじさん

2019年1月‐21年11月 zakzak人気ライター初の連載漫画挑戦は50歳のヨシオが学生時代の音楽活動振り返る50 回で抜群の面白さ。インディーズ台頭など80年代の東京ロックシーンも詳細に描き貴重な資料。場を用意した編集Y氏の仕事にも拍手。

あらゐけいいち / CITY

2017年3月~21年4月初版 講談社モーニングKC傑作「日常」に続く新作はモーニングに舞台移し連載も空振り連続で13巻続いたのが不思議。生活苦の女子大生たちの奮闘が軸だが、複数群像劇平行して描きナンセンス爆発も好不調の波あり終盤の市長選も不発で残念。

志村貴子 / ビューティフル・エブリデイ

2018年6月‐21年8月初版 祥伝社義兄妹ラブ軸でも地味キャラも愛情たっぷりに描き好感の人間模様ドラマが全3巻で完結。エロマンガ家の娘という設定で前半は下ネタ暴走気味でも、墓場で登場の亡き父や同級生の葛藤を巧みに描写し後半から盛り返す。

原作・澁澤龍彦、漫画・近藤ようこ / 高丘親王航海記

2020年9月-21年10月初版 KADOKAWA BEAM COMIX 全4巻で完結の澁澤人気作漫画化は9世紀のアジア舞台に夢幻に満ちた旅を巧みに表現し大成功。ジュゴンや獏など動物たちとの交流面白く、旅先で出会い同道する子供の秋丸も魅力抜群。夢で登場する薬子の描写も…

武田一義 / ペリリュー‐楽園のゲルニカ‐

2016年7月~21年8月初版 白泉社南方のペリリュー島舞台に仲間が次々死ぬ太平洋戦争の実情描き見事な成果。漫画家志望の大人しい兵士の田丸を主役に据え、デフォルメした現代風の絵が奏功し驚くほどの臨場感。終戦後の悲劇、現代描く終盤も鮮やか。

大山海 / 奈良へ

2021年7月1日初版 リイド社 売れないマンガ家の奈良行きで始まる連作マンガは、西大寺、東大寺、法隆寺と名所旧跡舞台に主人公を替えて退屈で冴えない現実描き出色。中盤挿入の新作マンガ「ドリームランド」の異世界から現実に戻る展開に感嘆。

鶴谷香央理 / メタモルフォーゼの縁側

2018年5月〜21年1月初版 角川書店 BL通して出会った女子高生と老婦人の交流描いた注目作は全5巻。書店でバイトする地味目な17歳の日常がリアルで、2人でコミケに出かける展開が最高。2人が心待ちにするBLマンガ新作や作者の心情も描き新鮮。

高野ひと深 / 私の少年

2016年6月〜20年12月初版 双葉社・講談社 アクションからヤンマガに移籍して描き続けられた年の差もの新機軸が成功。サッカー練習で始まる30歳OLと12歳少年の交流は、年齢を重ね、スポーツ用品メーカーの仕事の詳細や家族関係の詳細も描いて深み抜群。

ハミ山クリニカ / 汚部屋そだちの東大生

2021年3月10日初版 ぶんか社 東大卒作家の半自伝的マンガは汚部屋での母との共依存生活描き衝撃的。モノが見つからず同じもの買い埋もれる悪循環強烈で、たまに会う父との関係も複雑で終盤展開も見事。学友登場で母の束縛から逃れ最後に解放感。

近藤聡乃 / A子さんの恋人

2015年6月〜20年10月初版 KADOKAWA/エンターブレイン(BEAM COMIX、HARTA COMIX) 美大卒女子たちの悩み多き日々描いた意欲作は全7巻で完結。2人の男の間で揺れる主人公と作家が重なり私小説的な味わいで赤裸々な恋愛描写も迫力。こじらせキャラな友人挿話…

田島列島 / 水は海に向かって流れる

2019年5月〜20年9月初版 講談社KCデラックス 5年ぶり長編は互いの親が不倫した男女の出会いを軸に描いて出色の全3巻。漫画家の叔父の家に住む同居人の個性面白く、高校生とOLの関係うまく、同居する女装占い師の妹が主人公の同窓で空回りする展開愛らしい。

山本さほ / この町ではひとり

2020年7月5日初版 小学館 15年前の神戸時代を振り返る自伝的作品は全体にネガティブで重め。「岡崎に捧ぐ」で効果的だった強烈エピソードも畳み掛けると食傷気味で被害妄想な印象さえ出て残念。ただ、人物観察など細部の描写の面白さ見事。

田島列島 / ごあいさつ

2019年12月9日初版 講談社 「子供は〜」前後の発表作集めた短編集は持ち味のねじれた作風全開で圧巻。姉の不倫相手の妻の訪問受ける妹の葛藤描く表題作したたか。「官僚アバンチュール」の不倫に走る友達止められないカレー店のやり取り秀逸。

マキヒロチ / いつかティファニーで朝食を

2012年9月〜19年10月 新潮社バンチコミックス 14巻で完結の人気作は高校からの女友達4人組、麻里子、リサ、典子、栞を軸に、仕事や恋愛、家族関係の悩み描いて会心。各地人気店の朝食紹介のガイド要素しっかりも、リアリティ抜群のストーリーの見事さ際立つ…

今日マチ子 / スノーボール

2018年12月25日初版 集英社 学内一のモテ男がつくった卓球部の幽霊部員を巡る学園ドラマは過去の因縁を軸に展開し、マーガレット風王道路線もややベタな印象。見えない優子や卓球選手だった平野の謎で引っぱり、副委員長の張くんもアクセント。

山本さほ / いつもぼくをみてる

2018年3月-19年6月初版 講談社ヤンマガKC 男子小学生が主役のサード連載作は2巻で完結。悪いことをすると現れるあいつ絡めミステリアスに展開も重たい事情抱える子供を複数登場させ社会派な色調。ゲームや買い食いに夢中な間抜けでリアルな日常見せて流石。

オカヤイヅミ / ものするひと

2018年3月-19年6月初版 KADOKAWA BEAM COMIX 現代文学界モチーフの異色作が全3巻で完結。警備の仕事の傍ら執筆活動続ける様はリアルだが日常はもちろん展開も地味すぎ。主人公の書く小説も魅力薄めで一段掘り下げ欲しい。滝口悠生との特別対談よし。

吉田秋生 / 海街diary

2007年4月-18年12月初版 小学館フラワーコミックス 鎌倉舞台に4姉妹を描きマンガ大賞など受賞の傑作シリーズが全9巻で完結。不定期連載で12年かけ、クオリティ維持し大成功。父の死を期に異母妹を家族に迎えるが長女が抱える諸問題がスパイス。次女のキャ…

山本さほ / 岡崎に捧ぐ

2015年5月-18年10月初版 小学館ビッグスペリオールコミックス 横浜線沿線舞台に同級生の岡崎さんとの交遊軸に自身の半生描いた傑作マンガが全5巻で完結。90年代ゲーム文化描いて時代感抜群。問題家庭、美大受験やモラトリアム、ブラックな職場も上手に作品…

阿部共実 / 月曜日の友達

2017年9月-18年2月初版 小学館ビッグコミックスピリッツ 2巻で完結の意欲作は中学1年生の男女の恋愛に至らない月曜夜の秘密の交流描き成功。大人びたモノローグに違和感あるが、姉妹や兄弟の微妙な関係の挿入もうまく、海辺の町で黒と白の巧みなコントラス…