COMIC

山田参助 / あれよ星屑

2014年5月-18年2月初版 BEAM COMIX 焼け跡の東京舞台に死線共にした男たちの敗戦グラフィティが全7巻で完結。闇市、パンパン、進駐軍など生々しく赤裸裸エピソード満載。戦争編で残虐行為も露骨に戦場の非人間性、過酷な現実も大胆に描き見事な成果。

松本大洋 / ルーヴルの猫(上)(下)

2017年11月14日初版 小学館ビッグコミックススペシャル ルーブル美術館の屋根裏に棲む猫たちの生態をファンタジー全開で描いて圧倒的なアート性。美術館スタッフの日常、作品との関わり、周辺の町並みも素敵。絵から抜け出た猫の人っぽい造形はいいが筋立て…

古谷実 / ゲレクシス

2016年9月-17年3月初版 講談社イブニングKC 全2巻完結した異色SFはバウム一筋男の40歳に起きた不思議な体験描いて会心。公園にたたずむ初恋の相手が卵形物体に変身してからの意外な展開の連続に興奮。いてもいなくてもいい比率半分の男たちの哀歌に感涙。

益田ミリ / こはる日記

2017年10月20日初版 KADOKAWA 「ダ・ヴィンチ」連載作は見開きで1話完結並べ10代の少女の日常を描いて会心。かわいい中学編が素晴らしく、高校編はちょっとおませで少しドキドキなエピソード満載で見事。友だちや家族との関係が自然でリアル。

吉野源三郎(原作)、羽賀翔一(漫画) / 漫画 君たちはどう生きるか

2017年8月24日初版 マガジンハウス 1937年発行の歴史的名著初マンガ化が大成功。コペル君への手紙は文章のみ掲載し読み応え十分。戦前のアナクロ世界も学生時代の様々な悩みに見事な普遍性。貧困のリアリティ、いじめや臆病さ描くエピソード秀逸。

原案:イーピャオ、漫画:小山ゆうじろう / とんかつDJアゲ太郎

2015年2月-17年11月初版 集英社ジャンプコミックス アニメ化&実写映画化の人気ヒップホップ漫画が11巻で完結。「しぶかつ」で揚げればフロアもアゲる新時代のジュブナイルもの大成功。都内各所に加え、名古屋や関西3都市巡る展開よく、巻頭グラビアやコラ…

東村アキコ / 東京タラレバ娘

2014年9月-17年7月初版 講談社コミックスKiss ドラマもヒットの人気作が9巻で完結。30代女子会中毒の3人娘をシニカルに描き大成功。シナリオライターの業界ネタも面白く奏功。巻追うごとに読者悩み相談な「タラレBAR」が存在感増して創作とリアルが融合。

益田ミリ / 今日の人生

2017年4月23日初版 ミシマ社 日常のささやかな出来事考察マンガは4コマから40コマ超まで用意しミリワールド全開。こだわり装丁に興奮。編集者登場など舞台裏ネタも満載。白眉は関西での家族ネタで終盤の父親についてのエピソードで感涙の嵐。

花沢健吾 / アイアムアヒーロー

2009年8月-17年3月 小学館ビッグコミックス ゾンビ大量発生のサバイバル漫画が全22巻で完結。人間味溢れ過ぎな鈴木英雄を軸に展開で、来栖やコロリなどの他地域ネタに冗長な印象あったが終盤の池袋に収斂し納得。東京や富士、箱根、湘南など風景描写リアル。

岩本ナオ / 金の国 水の国

2016年7月13日初版 小学館 敵対するA国とB国の間の縁組みを巡る2人の偶然の出会いを描いた異色中編はこのマンガがすごい首位の快挙。強引な世界観でも、姫の健気な想いが素敵で、ムーンライトPも見方に水路引く計画など政策論争も面白み。

卯月妙子 / 人間仮免中つづき

2016年12月17日初版 小学館 統合失調症の現実描いた前作から4年半ぶり、北海道でのボビーとの愛と苦悩に溢れた生活を細かなエピソード満載に描いて感動。外に出られないなど驚くほど制約多い病気の現実に圧倒されるも、意外にハッピーエンド。

三部けい / 僕だけがいない街

2013年1月-2016年5月初版 角川書店 注目ミステリー作は8巻で完結。ご都合主義な再上映や絵のタッチなど粗い面目立つも、18年前の事件探る北海道の子供時代の細やかな描写見事。別の容疑者用意する犯罪者強力で、未来が残酷に書き換わる展開も新鮮。

巻来功二 / 連載終了!少年ジャンプ黄金期の舞台裏

2016年2月22日初版 イーストプレス 1980年前後に「少年ジャンプ」などで活躍した作者の実録奮戦記が興奮。編集者が次々交代し翻弄される様やタブー破る行為も告白。「少年キング」時代や「メタルK」誕生の舞台裏も興味深く自身の心理描写も奏功。

渋谷直角 / 奥田民生になりたいボーイ出会う男すべて狂わせるガール

2015年7月30日初版 扶桑社 奥田民生に憧れる35歳の中途入社編集者コーロキを中心にライフスタイル雑誌の混乱描いて迫力。ネットで叩かれたり切実さ抜群。プレス天海あかり巡る男たちの存在明らかにする展開面白く、シニカルなラストも見事。

東村アキコ / かくかくしかじか

2012年7月-2015年3月 集英社 マンガ大賞受賞の傑作自伝が全5巻で完結。在宮崎の恩師の強烈な個性への追憶深く、金沢での美大時代、二股三股で始めるマンガ家生活など細かなエピソード設け抜群の臨場感。デビューまでのいきさつも興味深く丁寧。

あらゐけいいち / 日常

2007年7月-15年12月初版 角川書店 全10巻完結ギャグ漫画は時定高校や東雲研究所舞台に不条理全開で笑いの嵐。ロボ東雲なの中心にゆっこ、みお、まいの高一女子のキャラ強烈で前半冴え。囲碁サッカー部など傍流充実で終盤4コマも活用し実験性抜群。

松本大洋 / Sunny

2011年9月-15年11月初版 小学館IKKI COMIX 「IKKI」連載作が6巻で完結。親と離れて暮らす「星の子学園」の子供たちの健気な日々描き筆者の最高傑作に。70年代後半の三重を舞台に当時の風俗も巧みに盛り込み大成功。冬野さほとの共同作業で絵力異次元。

ほしよりこ / 逢沢りく(上)(下)

2014年10月25日初版 文藝春秋 誇り高い14歳の少女りくが東京の親元を離れ大阪の親戚の家で暮らす展開が見事で手塚賞受賞も納得。特に関西弁ワールドに翻弄され親戚の子の時ちゃんに懐かれる様が楽しく最高。飼い始めるインコのチーパッチ絶妙。

しりあがり寿 / あの日からの憂鬱

2015年3月23日初版 エンターブレイン 大傑作「あの日からのマンガ」に続く新作集はコミックビーム掲載作中心に悲観トーン。震災後の月日の経過さりげなく描いて見せた「地球防衛家のヒトビト」素晴らしく時代の記録。放射能問題への斬り込み痛快で拍手。

今日マチ子 / みかこさん

2009年10月23日-2014年1月23日初版 講談社モーニングKCDX 7巻で完結していたウェブ連載作はふつうの女子高生みかこさんの日々を描いて切なさ抜群。美大志望の緑川との微妙な関係うまく、ささいなエピソードの詳細描く短編の連作の仕組みうまく、水彩画な彩…

望月ミネタロウ / ちいさこべえ

2013年4月3日-2015年4月4日初版 小学館ビッグコミックス 4巻で完結の山本周五郎作リメイクは現代に舞台移し下町の工務店「大留」を舞台に髭もじゃ若棟梁の苦闘とりつの健気さ鮮やかに描き傑作。孤児たちのキャラ現代風でリアル。デザインセンス抜群で和重視…

阿部共実 / ちーちゃんはちょっと足りない  

2014年5月20日初版 秋田書店 団地に住む中学生女子2人の友情から格差社会も巧みに描き驚異的傑作。ちーちゃんのボケ連発とゆるい作画で軽めの始まりも、姉の意外な苦労、カネが絡む終盤でナツの内面を刺激的なモノローグで表出し圧巻のラスト。

宇仁田ゆみ / トリドリ恋歌 

2014年10月5日 白泉社 ドキッとする恋人交換題材の「こうかん法則」ら3シリーズ作収録の新作は可愛い恋愛中心に時間軸も巧みに使って成功。特に幼稚園から中年まで9話で描いた「道草っぷり」のるう&ヨシタカの大胆な時の流れが圧倒的。

原作・宮崎克、漫画・吉本浩二 / ブラックジャック創作秘話〜手塚治虫の仕事場から〜 

2011年7月-14年8月初版 秋田書店 大評判となった1冊目から5巻まで続いたノンフィクション漫画が完結。当時のアシスタントや編集者など手塚治虫と親しかった人たちへの取材をそのまま漫画にする手法新鮮。迫力の表情で強烈エピソード連発し大成功。

宇仁田ゆみ / 青みゆく雪

2011年10月〜14年5月 小学館ビッグコミックス 連載6年2巻で完結作は中国からの留学生・青と同じ大学に通う雪子の純愛物語。青の使う微妙な日本語おかしくアパートの人間関係も面白い。ヒロイン雪子が素敵すぎる一方、中国人の友達でゲーマーの月が妙な存在…

渋谷直角 / カフェでよくかかっているJ−POPのボサノヴァカバーを歌う女の一生

2013年7月30日初版 扶桑社 ライター仕事で培ったシニカルな現実まぶすイタい感じの6つの短編群に感嘆。歌手目指すカーミィの挫折を効果的なエピソード、固有名詞満載で奏功。ミニコミ誌編集長が売れっ子案野丈にすべて持ってかれる話も見事。

今日マチ子 / アノネ、(上)(下)

2012年12月30日、13年7月30日初版 秋田書店 アンネの日記モチーフに太郎と花子の残酷な出会い描く意欲作。明るく美しく女優目指すヒロインが戦争に巻き込まれ、収容所に入っても健気な様に感涙。隠れ家での初キス、姉の複雑な感情も巧みに描き抽象化も鮮やか…

今日マチ子、藤田貴大 / mina -mo-no-gram

2013年7月16日初版 秋田書店 注目コンビでオリジナルマンガ創作の試みはリフレイン多用のマームな持ち味全開の痛々しい青春物語。青柳いづみヒロインに自殺する同級生の霊と過ごす展開に圧倒。下欄の絵の入れ方、プール場面など繰り返しも奏功。

古谷実 / サルチネス

2012年9月−13年9月 講談社ヤンマガKC 全4巻で完結の新作は妹思いの残飯おとこの生き様に感涙。意外に直球な暴走キャラに振り回される2人の男も面白く東京生活が強烈だが、まじめに教師を務める妹が素敵。兄の空回りな想いが笑いより涙誘う終盤が見事。

青野春秋 / 五反田物語

2013年6月4日初版 小学館ビッグコミック 「俺まだ」の笑える作風から一変の短編集。表題作は地味に渋く生きる男の灰色青春上京物語。19歳、20歳、21歳と風俗嬢との切ない恋愛が見事。作者の実生活描く「くらし」も新鮮。異色SF「ふえる男」も斬新。