COMIC

青野春秋 / 俺はまだ本気出してないだけ

2007年11月4日−12年10月3日 小学館IKKICOMIX 全五巻完結の異色作は40歳で会社辞めバーガー店でバイトしマンガ家目指す大黒シズオ42歳のダメダメな日々描き爆笑の嵐。サブキャラ主役の短編多数揃え終盤シリアスで娘や友人のエピソードで泣かせる意外な展開。

原作:松尾スズキ×漫画:すぎむらしんいち / 老人賭博

2011年7月22日−12年2月23日 講談社 全3巻完結の芥川賞候補作マンガ化は驚くほど相性ピッタリ。北九州舞台の残酷なギャンブルが暴走。老俳優とグラビアアイドルと役者揃った後半よく、すぎむら独創の結末も見事。巻末に掲載された松尾コラムが嬉しい。

ヤマザキマリ / テルマエ・ロマエ

2009年12月8日‐2013年7月4日 エンターブレイン 人気タイムスリップ風呂マンガが全6巻で完結。出足の面白さ引きづり何度も時代往来する中盤だれるも、ルシウスが温泉街に留まってからドラマ急展開。古代ローマ研究家ヒロイン、さつき登場で恋愛モード突入が…

卯月妙子 / 人間仮免中

2012年5月22日初版 新潮社 10年間の沈黙を破っての新作は2p程度のエピソード連作も統合失調症、歩道橋バンジー、闘病生活を素直にリアルに綴り圧倒的傑作。25歳年上の中年男ボビーの男気と恋愛に感涙の嵐。指輪ホテルの裏エピ興味深し。

冬川智子 / 深夜0時にこんばんは

2013年4月30日初版 太田出版 深夜ラジオを聴く人たちの日常の悩みを交互に描いて佳作。イラストレーターのカホの地味な片思いがリアル。静岡の中学男子の純情とはがき職人への憧れも微笑ましい。団地の主婦による劇団主宰DJとの思い出上手い。

さそうあきら / ミュジコフィリア

2011年7月〜13年1月 双葉社 京都のアート系大学を舞台に現代音楽に直球勝負。メトロや湯浅譲二まで登場しダメ大学生が成長する展開も痛快。腹違い3兄弟の確執、反抗は過剰感でもヒロインの凪が魅力増す展開さすが。大学の仲間も味あり楽しい。

宇仁田ゆみ / うさぎドロップ

2006年5月〜12年3月 祥伝社 全10巻で完結した子育てマンガの傑作は意外な結末に唖然。6歳児のりんを育て始めるダイキチの奮闘描く前半が素晴らしく1〜4巻は完璧。高校生になる後半は強引な連載の弊害か。出会って7日目描く番外編もいい。

宇仁田ゆみ / ゼッタイドンカン

2012年10月3日初版 白泉社 メロディ、楽園と渡り描き継がれた連作は歌音と中森くんのピアノでつながる10年愛。高校時代の初恋からハッピーエンド後までほのぼのと優しく描き心地よさ抜群。調律師という設定面白く、1年に1度の再会に新味。

岡崎京子 / RUDE BOY

2012年7月18日初版 宝島社 幻の長編2本初単行本化は89〜90年連載の表題作が音楽規制される近未来都市舞台に岡崎節炸裂。84年の漫画ブリッコ連載「爆裂女学校」はレア度抜群。ワープロ書体の初期作風味での下北沢高校時代ネタ興味深い。

原作:大場つぐみ、漫画:小畑健 / バクマン

2009年1月〜12年7月 集英社 全20巻完結の少年ジャンプ連載メタ作品は夢叶え大団円。編集の裏話満載で途中だれても刺激的なマンガ家投入。声優ネタ振るわなくても亜城木夢叶と新妻エイジのライバル感よく平丸一也の人間味溢れるキャラも奏功。

しりあがり寿 / あの日からのマンガ

2011年8月5日初版 エンターブレイン 東日本大震災後に描かれた作品を順番に並べて画期的な臨場感。「地球防衛家のヒトビト」も震災&原発関連オンパレードで興奮も、「海辺の村」「震える街」「そらとみず」など近未来を描く強烈な完成度に衝撃&感涙。

岡崎京子 / 森

2011年9月25日初版 祥伝社 事故で連載1回で休載した未完の表題作は充実度抜群で続き読めない悔しさ。「タルカムパウダー」など85−95年の単行本未収録の7編も面白さ存分。幻の「ショコラな気持ち」の連作、カットも多数盛り込み嬉しい。

羽海野チカ / スピカ

2011年7月20日初版 白泉社 連載「3月のライオン」が絶好調の彼女の短編集は、00〜04年のデビュー当初の作品群だけに初々しさ抜群。ひな&高橋彷彿のバレエ少女と野球部員の交流描く表題作はじめ短くも少年探偵など少女漫画な味わいしっかり。

黒田硫黄 / あたらしい朝

2008年8月22日、2010年11月22日初版 講談社アフタヌKC 1930年代のドイツ描く意欲作は大金を拾う2人の運命が戦争で翻弄、作品自体も漂流。日本での日々が大半占め、日本人との交流にシフトも、ネーム低調。ただ、筆使った戦中の風景描写素晴らしく、得意のコ…

ヤマシタトモコ / HER

2010年7月15日初版 祥伝社フィールヤングコミック 「このマンガがすごい」オンナ編1位ゲットの注目作は全6編の連作オムニバスで驚くほどの文学性。妄想する美容師、高校生と白髪レズビアンら、ちょっと病的なケース多めにオンナたちの本音えぐり心理描写じ…

望月ミネタロウ / 東京怪童

2009年6月23日、12月22日、10年8月23日初版 講談社モーニングKC 別名義で実験性追求した問題作が全3巻で完結。脳に問題を抱え特異な症状もつ若者が集まる病院舞台にハシや花の苦悩描くも物語の進行がスムースでなく、ハシ描くマンガもたっぷり挿入しアー…

今日マチ子 / 100番めの羊

2009年11月6日初版 廣済堂出版 孤児で修道院で育てられた女子高生なおみの青春をドラマや漫画の定番エピソード満載に直球で描き切って成功。憧れの年上男ハヤシは同棲する謎の女性いて不良性演出。後輩中学生マナは超金持ちでベタな設定も潔さ感。

今日マチ子 / cocoon

2010年8月20日初版 秋田書店 気鋭の漫画家新作は太平洋戦中の島の病院が舞台の意欲作。看護隊の女子たちの交流リアルに普遍性持たせるが戦中の残酷な現実をきっちり挿入しカタストロフへ導く展開さすが。独自画風、旧字なフォントこだわり奏功。

古谷実 / ヒメアノ〜ル

2008年〜2010年 講談社ヤンマガKC 全6巻完結は清掃で働く地味な独り身男2人の苦悩と微笑ましい交流。岡田青年から30男渡辺へ早々に主役後退。殺人繰り返す凶悪犯の大胆な犯行にもスポット当て意外に群像劇。凶行進行の一方で主役2人に希望も用意。

南Q太 / ぼくの家族

2009年12月13日初版 集英社 「YOU」に連載した待望新作は子連れ再婚同士の結婚生活を描いて成功。「キッチン」からの6話連作でも娘が不登校となり夫がリストラと展開見せた「羊と筏」からが凄まじく、子育ての繊細な悩みがリアリティ抜群。

大橋裕之 / 音楽と漫画

2009年5月30日初版 太田出版 ミニマルな作風4編収録。高校生のバンドを始める筋立ての中編「音楽」は古美術と古武術の交流が楽しい。やるきなくオヤジな少年たち登場させ敷居低め。「ラーメン」と「漫画」はヒロイン魅力的でキュンとくる作品。

こうの史代 / この世界の片隅に

2008年2月12日、8月11日、09年4月28日初版 双葉社 戦中の軍都・呉の日常を新妻すずの健気な奮闘軸に描いた上中下巻の力作が完結。当時の風物、生活情報ふんだんに徹底的に調べ取材し盛り込んだ姿勢に脱帽。包帯に活字置く実験性も素晴らしい。右手を想った詩…

小山ゆう / あずみ

1995-2009年 小学館ビッグコミック 無敵の美人剣士の戦いの日々を切なく描いた傑作が全48巻で完結。1巻でメイン登場人物がほとんど死ぬ展開も人気化で延命続けるも、次々新キャラ投入し後半盛り返し、江戸初期の主要人物も次々絡んで極上の面白さ。

岡崎京子 / 東方見聞録 市中恋愛観察学講座

2008年2月20日初版 小学館クリエイティブ 嬉しい初単行本化の87年ヤンサン連載作は貴重な80年代東京名所案内。ハワイ少女キミドリが祖母の元恋人の孫と東京中をデートする筋立てで、原宿ホコ天、銀座に中野ブロードウェイ、国会議事堂、国立と渋い選択。

望月峯太郎 / 万祝

2003-2008年 講談社ヤンマガKC 元気少女フナコが大活躍する海賊冒険譚が10巻&11巻同時刊行で完結。とくに三崎あたり髣髴の港町の描写が抜群。海賊次々倒すフナコの格闘パワーも魅力。バミューダの謎も巧く活用し宝探しにリアリティ出し成功。

河井克夫 / 猫と負け犬

2008年2月29日初版 メディアファクトリー 30代の独身女子ノブコに未来から送られてきた猫型ロボットが活躍するドラえもんパロディ41話が圧巻。ノブコのキャラ設定絶妙で、日常の悩み・感情やエピソードがリアリティあり面白い。構図的にキャラ者との相似も。

魚喃キリコ / キャンディーの色は赤。

2007年7月25日初版 祥伝社(Feelコミックス) 待望の新作はミニマル路線追求で台詞も絵も極端なまでに抑制された、女性の生活の鋭いスケッチで連作。残酷なまでにリアルな心情、現実を描き作家性も到達点。次作はもう少しユルめでOK。ハルチンとの中間点希…

古谷実 / わにとかげぎす 

2006〜2007年 講談社ヤンマガKC 全4巻44話で完結は夜間警備員で働く30男の新たな人生。無為に過ごした日々を悔い、友達を探すなか、後輩ができ、ヤクザの女絡む前半のヤマ場のあと、後半は職場変えて新展開も用意。意識変革への希望のメッセージ。(やま)

岡崎京子 / 秋の日は釣瓶落とし

2006年12月16日初版 双葉社 92年発表の中編初単行本化は激薄寂しい1000円。激務ながら浮気中の兄とその妻、オカマの弟と惚け始めた母の微妙な関係描く家族もので次のステージへの通過点的印象。併録「ハンバーガー」は超短編連作でオールカラー。(やま)

南Q太 / オリベ

2006年4月20日初版 マガジンハウス 「オリーブ」他連載の待望新作は色気ゼロ、テンション低めの23歳、喫茶店で働くフリーターのオリベの地味な日々が描かれ新境地。1人暮らしでの生活の細部におけるこだわり、楽しみが超マイペースに描いて大成功。(やま)