2020-01-01から1年間の記事一覧

アーヤと魔女(企画・宮崎駿、監督・宮崎吾朗)

TV

2020年12月30日19:30 NHK ジブリ初の全編3DCG作品は英国を舞台に孤児院で育った10歳の少女のタフに前向きに苦難に立ち向かう姿が新鮮。90年代の英国舞台に魔女を手伝う展開面白く、過酷な日々にめげないアーヤの姿の細かな描写秀逸。

佐々木敦 / 小さな演劇の大きさについて

2020年6月20日初版 Pヴァイン テン年代の小劇場演劇についての文章まとめた一冊は新しい演劇の登場を目撃する流れ面白く、コロナ禍だからこそ沸き上がる演劇愛を再認識。チェルフィッチュやサンプル、地点、飴屋法水や新興勢力の活動を鋭く紹介。

今村夏子 / 木になった亜沙

2020年4月6日初版 文藝春秋 想い通りにならず流転重ね変身してしまう女性描く3編がともに強烈。触ったものを誰も食べない女性が割り箸となって想い果たす表題作凄まじく細かな描写力も圧巻。ボールから逃げる主人公への声援が演劇的で鮮やか。

マームとジプシー / 窓より外には移動式遊園地

2020年12月10日11:30 Lumine 0 ミニ公演&インスタ企画Dは青柳いづみが独り芝居で奮闘。名久井直子とのコラボ「Room#301」の影絵な演出巧く、「治療、家の名はコスモス」も川上未映子と世界観融合。空間凝り「路上」等映像作品も面白い。

ブレイディみかこ / ワイルドサイドをほっつき歩け

2020年6月5日初版 筑摩書房 イングランド南部のおっさんたちの生態描いた1章の各エッセイが秀逸。作者の仲間たちで意見割れたEU離脱、緊縮財政で生じた社会の歪みを中年たちの生き様を通して明らかにして圧巻。世代分析する解説編は蛇足か。

マームとジプシー / かがみ まど とびら

2020年11月22日11:30 彩の国さいたま芸術劇場 NINAGAWA STUDIO(大稽古場) 「めにみえない みみにしたい」に続く子どもも楽しめる彩の国連携作はコロナ延期経て実現。棄てられる「みるぐいぬ」守るべく、鏡と窓と扉の3場駆け巡る展開が見事。4女優が躍動…

中川一徳 / 二重らせん 欲望と喧噪のメディア

2019年12月12日初版 講談社 「メディアの支配者」の続き描いた新作はテレビ朝日とフジテレビの支配を巡る権力闘争の軌跡を明らかにして衝撃的。田中角栄の存在、旺文社・赤尾家のやり口、上場の真相、村上ファンドの登場も興味深く会心の一作。

古矢旬 / アメリカ合衆国史④グローバル時代のアメリカ

2020年8月21日初版 岩波新書 冷戦時代から21世紀のトランプ政権まで描くシリーズ最終巻は、時事的な動きもおさえつつ新自由主義の台頭など経済の動きも丁寧に追って秀逸。レーガン政権による共和党の変貌が鮮やかに描かれ、富の配分が歪になる様もクリア。

森見登美彦(企画・原案:上田誠) / 四畳半タイムマシンブルース

2020年7月29日初版 KADOKAWA ヨーロッパ企画の代表作が四畳半神話大系と融合し面白さ抜群。タイムマシンの辻褄合わせくどいが、灼熱地獄の下鴨幽水荘に蠢く住人たちの描写よく、エアコンのリモコンへの執着楽しい。後輩女子の明石さんも魅力的。

田島列島 / 水は海に向かって流れる

2019年5月〜20年9月初版 講談社KCデラックス 5年ぶり長編は互いの親が不倫した男女の出会いを軸に描いて出色の全3巻。漫画家の叔父の家に住む同居人の個性面白く、高校生とOLの関係うまく、同居する女装占い師の妹が主人公の同窓で空回りする展開愛らしい。

青年団プロデュース / 馬留徳三郎の一日(作:高山さなえ、演出:平田オリザ)

2020年10月11日14:00 座・高円寺 コロナ禍で遅延した近松賞作公演は山深い田舎の集落を舞台に高齢者中心のコミュニティの危うさをコミカルに描き秀逸。誰が惚けか不明な巧みな設定、オレオレ詐欺も入れ見事な同時代性。老夫婦の意外な逞しさ楽しい。

村上春樹 / 一人称単数

2020年7月20日初版 文藝春秋 6年ぶり短編集は自身が前面に出る私小説風ファンタジー多めの嬉しい8作。チャーリーパーカーやビートルズ、ヤクルトスワローズなど趣味的蘊蓄の入れ方効果的。表題作のバーでの顛末は近年の恐い世情感じさせ戦慄。

ダン・スキャンロン / 2分の1の魔法

2020年10月4日14:00 イオンシネマ港北ニュータウン 主要メンバー抜けて心配されたピクサー新作は魔法が消えた世界に暮らす2人の兄弟を軸に展開するファンタジーアドベンチャーで文句なし。落ちこぼれな兄と内気な弟コンビよく、父の復活狙うアイテム探しも…

五反田団 / いきしたい

2020年9月29日14:30 こまばアゴラ劇場 嬉しい久しぶりアゴラ公演はきめ細かいコロナ対策行い実現の3人芝居。1時間程度のコンパクトさ嬉しい。死んだ元夫が喋り出しいちゃつく展開面白く、ちぐはぐな旅先で2人の男の間で揺れる谷田部美咲が素晴らしい。

半沢直樹

TV

2020年7月19日〜9月27日21:00 TBS 大ヒットドラマの続編は出向先の証券子会社での活躍と銀行復帰後の帝国航空再建描き堺雅人の迫力度もアップ。M&Aや航空再建の詳細はツッコミどころ満載だが、怒鳴り合い、顔芸オンパレードな歌舞伎な演出楽しい。

高山羽根子 / 首里の馬

2020年7月25日初版 新潮社 芥川賞受賞作は沖縄・港川を舞台に郷土資料館を手伝う未名子の日々と社会の現状を巧みに切り取って好感。異国の人々との交流もつオペレーターの仕事はやや謎だが、幻の宮古馬の登場と関わり深める終盤の展開は見事。

浦安鉄筋家族

TV

4月10日〜9月25日24:22 テレビ東京 浜岡賢次の人気漫画ドラマ化はコロナで休止期間入るも12話完結。佐藤二朗機能しギャグ漫画テースト具現化。水野美紀が母役奮闘。長女の岸井ゆきの効果的。ゲスト豪華にダメな魅力爆発。ヨーロッパ企画起用嬉しい。

ヨコハマトリエンナーレ2020 AFTERGLOW

ART

2020年7月17日〜10月11日 横浜美術館、プロット48 7回目を迎えた注目アートイベントはコロナ禍でも巧みに人数制限して成功。独学、発光、友情、ケア、毒を切り口に尖った作品多数展示。映像作品がドキュメンタリー風多め。座ったり鳴らしたりの体験型作品が…

山本さほ / この町ではひとり

2020年7月5日初版 小学館 15年前の神戸時代を振り返る自伝的作品は全体にネガティブで重め。「岡崎に捧ぐ」で効果的だった強烈エピソードも畳み掛けると食傷気味で被害妄想な印象さえ出て残念。ただ、人物観察など細部の描写の面白さ見事。

磯崎憲一郎 / 日本蒙昧前史

2020年6月25日初版 文藝春秋 グリコ森永、平相銀、五つ子、大阪万博、横井庄一など昭和史彩った事件と主役を連続して描いて出色の出来映え。事実と創作の混ぜ方巧みで谷崎賞受賞も納得の今年最大の成果。実験的な句読点の入れ方も意外に効果的。

高橋秀実 / パワースポットはここですね

2019年10月25日初版 新潮社 榛名神社、清正井から江ノ島、伊勢神宮まで全国のパワースポットを取材し、多様な文献参照し参拝者にも積極的に話聞き持ち味発揮。近所の川崎周辺探索面白いが、「新潮45」連載作で神社ばかり目立つ構成に違和感。

村上春樹 / 村上T 僕の愛したTシャツたち

2020年6月4日初版 マガジンハウス 「ポパイ」連載エッセイの単行本化は各地で手に入れたTシャツを写真見せ紹介。軽妙なコメント効果的。サーフィン、ハンバーガー、ウイスキー、ビール、ロックなどジャンルごとに並べ、ビジュアル的にも楽しい一冊。

JOKE〜2022パニック配信!

TV

2020年8月10日22:00 NHK 作・宮藤官九郎、演出・水田伸生コンビ新作は45分ノンストップホラー。ネット番組「俺んちチャンネル」舞台にお笑い芸人の沢井演じた生田斗真が奮闘。AIスピーカー活用し事件発生でアクセス急増する展開が見事。

遠野遥 / 破局

2020年7月30日初版 河出書房新社 芥川賞受賞作は公務員志望のリア充慶大生の日常描き共感度ほぼゼロ。母校のラグビー部で後輩をしごき、恋人も次々に変える性生活、上から目線で世の中眺める展開に嫌気。ただ、最終盤で訪れる唐突な破局がシニカル。

梯久美子 / サガレン 樺太/サハリン境界を旅する

2020年4月24日初版 KADOKAWA 2誌に連載の「サガレン紀行」単行本化は2部構成。前半の紀行ものは鉄道オタクぶり発揮。林芙美子や北原白秋らの足跡挿入も効果的も樺太史も概観でき秀逸。宮沢賢治の足取りメインの後半は分析研究にやや走りすぎ。

村上春樹 / 猫を棄てる 父親について語るとき

2020年4月25日初版 文藝春秋 自身の父について京都での生い立ちから戦中の苦難も含め味わい深く詳述し資料的価値も十分。住職の家に生まれ2度の応召、京大卒業後の教員生活も鮮明。表題の夙川から香櫨園の浜へ猫を棄てに行くエピソードが秀逸。

絲山秋子 / 御社のチャラ男

2020年1月21日初版 講談社 ジョルジュ食品舞台にチャラな三芳部長と同僚の視点や日々の生活描き会心。あるある満載の会社員生活。メンヘルな生真面目キャラの伊藤雪菜や野心家な新人・池田かな子ら面白く、シニカル展開も見事で切れ味抜群。

村田沙耶香 / 丸の内魔法少女ミラクリーナ

2020年2月29日 角川書店 小3から魔法少女ごっこ続ける36歳OLが主役の表題作はじめ収録4作ともぶっ飛び展開で本領発揮。初恋男子を監禁する女子大生描く「秘密の花園」や性別隠す学校や怒りのない近未来社会描いた小品も切れ味鮮やか。

田島列島 / ごあいさつ

2019年12月9日初版 講談社 「子供は〜」前後の発表作集めた短編集は持ち味のねじれた作風全開で圧巻。姉の不倫相手の妻の訪問受ける妹の葛藤描く表題作したたか。「官僚アバンチュール」の不倫に走る友達止められないカレー店のやり取り秀逸。

阿部和重 / オーガ(ニ)ズム

2019年9月25日初版 文藝春秋 神町サーガ最終章はオバマ訪問控えた新都と菖蒲家巡りCIA苦闘の800頁超大作。阿部親子が巻き込まれ役コミカルに演じ、育児ネタ楽しい。世田谷宅でのタイテルバウムとの共同生活、神町の地名盛り込みも嬉しい。