2019-01-01から1年間の記事一覧

町屋良平/1R1分34秒

2019 年1月30日初版 新潮社 21歳のプロボクサーの心情描いて芥川賞受賞も納得の仕上がり。対戦相手のSNSをチェックし、親しみもってしまう主人公が新鮮。現役ボクサーで駆け出しトレーナーのウメキチとの練習でキャラが激変する様が迫力。

モモンガ・コンプレックス / となりの誰か、向こうの何か。

2019 年3月24日14:00 若葉町WHARF 待望の新作は木下順二「二十二夜待ち」モチーフに民謡生かす試み奏功。菓子配り、トイレットペーパー結った綱引きを客席に渡し参加する楽しさ用意し大成功。岡田智代ら加えた10人出演で充実ぶりも、終盤に満腹感。

あひるなんちゃら / ハルサメ

2019年3月18日19:00 駅前劇場 誕生会を開いてもらうことになる中年男性の話はダメ人間満載の不条理コメディ。主役に負担感あるも、知らない女2人組で宮本奈津美ら爆走し好演。ハルサメという名の亀を巡る展開が異様で、弟や妹の介入もシニカル。

青年団 / 思い出せない夢のいくつか(平田オリザ演劇展vol.6)

2019年3月11日17:30 こまばアゴラ劇場 超人気企画第六弾千秋楽は幻の94年シードホール公演作の貴重な再演。「銀河鉄道の夜」モチーフに内田百閒風味混ぜた3人芝居は歌も披露した藤松祥子が機能し、兵藤公美演じたベテラン女優との旅行きがじんわり。

森見登美彦 / 熱帯

2018 年11月15日初版 文藝春秋 幻の本「熱帯」めぐる追跡描く新作長編は、「千一夜物語」や「海底二万里」大胆活用な貿易譚に発展。池内氏のノート長過ぎだが、森見本人登場の冒頭や東京での白石さんのキャラも面白く、後半の大航海な展開も見事。

MONO / はなにら

2019年3月10日14:00 吉祥寺シアター 20年前に災害で親族を失った者たちが形成した疑似家族の別れの時を描いて唸る仕上がり。些細な対立を人間味たっぷりにコミカルに仕上げ土田節炸裂。新劇団員多数迎え、養父への愛情を巧く出した立川茜ら新顔輝く。

青年団 / 忠臣蔵・OL篇(平田オリザ演劇展vol.6)

2019年3月8日15:00 こまばアゴラ劇場 OLという言葉にノスタルジーでも、3チーム公演のBプロは森内美由紀の大石が素敵。イラスト満載に書記も担当した黒木絵美花が大成功。石橋亜希子も安定だが、新顔も機能し籠城か仕官か討ち入りかで揉めるOLたちが躍動。

青木理 / 情報隠蔽国家

2018 年2月28日初版 河出書房新社 現役自衛官や元公安調査官の告発による情報隠蔽の実態暴き前川スキャンダルの内情描き迫力。サンデー毎日連載コラム挟む構成は難だが、自衛隊の漏洩犯探しや暴力団と取引し大量の麻薬輸入許した道警の失態にも驚く。

東葛スポーツ / ほしゅのリゾート

2019年2月21日20:00 3331アーツ千代田ギャラリーB 保守一色に染まった都心ホテル舞台に右寄りネタ満載の異色作はしじみ起用が大成功。歴史修正でAV経歴もAV機器メーカー勤務に変える自虐ネタに拍手。全員サングラス着用残念だがチェル出演者多めでラップに冴…

上田岳弘 / ニムロッド

2019 年1月28日初版 講談社 芥川賞受賞作は仮想通貨モチーフの不気味な青春小説。データセンターで働きビットコイン採掘任される主人公と元同僚、金融機関勤務の恋人との関係を軸に物語展開も、途中に挿入される駄目な飛行機紹介がアクセント。

シベリア少女鉄道 / いつかそのアレをキメるタイム

2019年2月19日18:00 赤坂RED/THEATER 「下町ロケット」など池井戸作品世界パロディは具体的な情報なくても進行する批評性鮮やか。トラクターと思わせといて実はスニーカーつくったりする展開面白く、体型的に似てない浅見紘至の阿部寛のモノマネ芸最高。

渡辺源四郎商店 / シェアハウス「過ぎたるは、なお」(作・演出:畑澤聖悟、工藤千夏)

2019年2月8日19:00 こまばアゴラ劇場 近未来のグループホームが舞台の新作は2人の往復書館で台本仕上げた労作。環境破壊された世界で育ての親のヒューマノイドを頼る体制側と反体制側に分かれた兄弟の再訪描くSFは妄想感高め。まりりんの挿話で笑い。

松尾スズキ / 「大人計画」ができるまで

2018年12月15日初版 文藝春秋 北九州での生い立ちから上京し下北沢に住み大人計画を立ち上げ、商業的にも成功した現在までの過程をつぶさに語り意義深い一冊。「イケニエの人」など激務で不満足だった作品にも言及。舞台裏ネタ満載で基調な証言。

範宙遊泳 / うまれてからまだしねない

2019年1月31日19:30 本多劇場 好評終末譚再演で中規模劇場進出は小劇場なら生きた映像機能せず、大空間の難しさ痛感。銀粉蝶が存在感発揮、熊川ふみ&油井文寧のゲイカップルの悲恋うまく、災害で第三黒山羊荘の住人たちがつながる展開はうまい、

チェルフィッチュ / スーパープレミアムソフトWバニラリッチソリッド

2019年1月25日19:30 シアタートラム コンビニを描いた傑作がソリッドに変な動き増量でリメイク。バッハに加えクイーンも交え怪しさ全開。川崎麻里子が新人店員として新作アイスめぐる展開いいが、様々なプレッシャーに壊れる店長の愚痴りダンスが最高。

保坂和志 / ハレルヤ

2018年7月30日初版 新潮社 片目猫の花ちゃんとの18年記録する表題作と再録「生きる歓び」は看病内容の詳細など面白く、猫への深い考察に脱帽。川端賞作「こことよそ」は作家生活とデビュー前夜のカルチャーセンター時代の日常振り返り出色。

梯久美子 / 原民喜 死と愛と孤独の肖像

2018年7月20日初版 岩波新書 広島で被爆も生き伸び「夏の花」などの作品を遺し、中央線へ飛び込み自殺した作家の死と愛と孤独を描き流石の仕上がり。遠藤周作との交流、対人関係が苦手で経済的に苦労し、妻を結核で亡くす日々の詳細克明で興奮。