2019-01-01から1年間の記事一覧

相澤冬樹 / 安倍官邸vs.NHK——森友事件をスクープした私が辞めた理由

2018年12月25日初版 文藝春秋 森友報道で大きな成果あげた相澤記者の取材手法の詳細を記して興奮の一冊。くだけた文体に出足違和感も、クロ現の舞台裏、官邸に近い上層部との対立興味深い。何より理財局幹部から言質引き出す戦略的やり取り圧巻。

KAAT キッズ・プログラム2019 二分間の冒険(原作:岡田淳、上演台本・演出:山本卓卓)

2019年8月17日14:00 KAAT神奈川芸術劇場 大スタジオ 人気ファンタジー小説の舞台化は範宙遊泳色抑えめも卓卓の意外な器用さ発揮し子供たち喜ばせる仕上がり。魔界に誘う黒猫のダレカの声で犬山イヌコ起用、映像やガチャも巧みに活用し、子供が生け贄となる世…

金成隆一 / 記者、ラストベルトに住む —— トランプ王国、冷めぬ熱狂

2018年10月30日初版 朝日新聞出版 オハイオ州などトランプ支持者の実像を探り「トランプ王国」続編の趣き。アパート借り滞在で見えた薬物依存など社会の厳しい実情に驚くが、後半の白人民族主義や抵抗の動き蛇足感。消えた産業分析など深掘り欲しい。

夏の日の本谷有希子 / 本当の旅

2019年8月8日19:00 VACANT 16年夏作以来の久々公演は自身の短編小説の舞台化。LCC使いマレーシアへハネケン、づっちん、ヤマコの3人を、それぞれ3人の役者が演じチェル的な楽しい実験性。小説の内容忠実もSNS画像巧みに使い臨場感。

五反田団 / 偉大なる生活の冒険

2019年7月30日19:30 アトリエヘリコプター 08年傑作公演が前田司郎&内田慈コンビそのままに5%書き直し復活。10年経た40歳男のゲームばかりして過ごす日常が重み増し笑える要素は低下。恋愛に苦戦する元カノで怒る内田恐く、隣人役で玉田真也も新味。

絲山秋子 / 夢も見ずに眠った。

2019年1月30日初版 河出書房新社 2010年の岡山に始まり98年の学生時代の盛岡、22年の下北沢まで国内各地舞台にロスジェネ男女2人の流転な25年描き出色。婿養子に入り住んだ熊谷や鬱で退社し青梅でのやり直す青梅など地域描写細かく見事。

松尾スズキプロデュース 東京成人演劇部 / 命、ギガ長ス

2019年7月18日19:00 ザ・スズナリ 新ユニット第一弾は安藤玉恵と2人芝居で8050問題に取り組み傑作誕生。50代ニートと認知症気味の母のダメダメな生活感全開に面白い台詞と動き連発。ドキュメンリー撮る女子大生の視点入れる巧みな構造に感嘆。

SAF+マームとジプシー / めにみえない みみにしたい

2019年7月15日11:30 彩の国さいたま芸術劇場 小ホール 1年強で実現の再演は、意地悪しりとりなど観客参加の楽しいイベント&アイデア追加し、母と娘というテーマもくっきりし完成度が向上。長谷川洋子が活躍、歌やダンスよく4人の女優陣が躍動。原田郁子の…

山本さほ / いつもぼくをみてる

2018年3月-19年6月初版 講談社ヤンマガKC 男子小学生が主役のサード連載作は2巻で完結。悪いことをすると現れるあいつ絡めミステリアスに展開も重たい事情抱える子供を複数登場させ社会派な色調。ゲームや買い食いに夢中な間抜けでリアルな日常見せて流石。

青年団+韓国芸術総合学校+リモージュ国立演劇センター付属演劇学校 / その森の奥

2019年7月10日19:30 こまばアゴラ劇場 フランス、韓国の団体との共同プロジェクトは舞台をマダガスカルに移した「森の奥」から改題。猿研究への情熱と研究資金獲得、プライベートの現実も絡ませ鋭い一作に。字幕多めでも差別への言及が効果的なスパイス。

中川寛子 / 東京格差——浮かぶ街・沈む街

2018年12月10日初版 ちくま新書 生活の場所として東京の街を過去現在未来で分析して意外な大作。特に商業地から離れた閑静な住宅地の歴史的意味など解説した過去編が面白いが、ページ数少なめ。一方で未来編は様々なコミュニティ紹介がやや過剰感。

オカヤイヅミ / ものするひと

2018年3月-19年6月初版 KADOKAWA BEAM COMIX 現代文学界モチーフの異色作が全3巻で完結。警備の仕事の傍ら執筆活動続ける様はリアルだが日常はもちろん展開も地味すぎ。主人公の書く小説も魅力薄めで一段掘り下げ欲しい。滝口悠生との特別対談よし。

今村夏子 / むらさきのスカートの女

2019年6月30日初版 朝日新聞出版 近所に住む「むらさきのスカートの女」と、彼女を追いかける「わたし」2人の狂気描き一気読み必至の傑作。ホテル清掃の職場の人間関係など詳細も面白く圧巻。終盤「わたし」の存在明らかになる展開も不気味で見事。

ロロ / はなればなれたち

2019年6月26日14:00 吉祥寺シアター 豪華布陣で臨む10周年作は板橋駿谷「なつぞら」出演効果あり連日完売の大成功。ヒロインに森本華据え演劇活動に勤しむ若者美しく、客演の曽我部恵一「うん」の台詞と劇伴も効果的。劇中劇「わが星」も完成度高め。

ある編集者のユートピア 小野二郎:ウィリアム・モリス、晶文社、高山建築学校

ART

2019年4月27日-6月23日 世田谷美術館 晶文社の草創期支えた編集者の小野二郎中心とした展示は平野甲賀や植草甚一作品を多数並べて往時の勢い体感でき興味深い試み。義理の弟の高平哲郎の存在感も抜群、世田谷村も興味深く70年代の第一級サロンに憧憬。

スペースノットブランク / すべては原子に満満ちている

2019年6月19日19:30 こまばアゴラ劇場 ヌトミック系ユニット新作はポテンシャル感じるも陳腐な台詞や動きも多く退屈至極で大失敗。ステージに横たわる動きやラスト中心に照明の使い方や近藤千紘ら足振り上げての発声などに新味あり、成熟後に再見したい。

森功 / 地面師 他人の土地を売り飛ばす闇の詐欺集団

2018年12月14日初版 講談社 五反田の老舗旅館舞台に積水ハウスから55億円を騙し取った地面師たちの様々な手口を複数事件から明らかにして会心。都心の高額物件相続した者の入院したタイミング狙うなど巧妙。立件も意外に難しい実情にも驚嘆。

ラッパ屋 / 2.8次元

2019年6月13日19:00 紀伊国屋ホール 苦境に喘ぐ老舗劇団がイケメン客演使い2.5次元ミュージカル挑戦する筋立てで、理想とのギャップに苦しむ展開うまい。演劇モチーフに稽古の実際見せ歌に踊りも挑戦だが、歌唱力抜群の豊原江理佳の助っ人ぶり見事。

KERA・MAP / キネマと恋人

2019年6月12日13:00 世田谷パブリックシアター Wアレン「カイロの紫のバラ」を昭和初期の小島に舞台を変えた好評作再演は妻夫木演じた喜劇役者の出演する時代劇が強烈で全体にベタ感覆うも緒川&ともさかの姉妹の造形うまく、おかしくも哀れで切ない後味が秀…

塩田武士 / 歪んだ波紋

2018年8月7日初版 講談社 誤報にまつわる5つの物語は関西の地方紙やネットメディアの記者たちの苦闘を描き見事な仕上がり。現実の事件や事象も巧みに交え、各エピソードつながる展開に感嘆。誤報に運命を狂わされる人々も詳述し恐さも抜群。

ちいさなプリンセスソフィア

TV

2015年10月4日-2019年5月26日7:30 テレビ東京 断続的に放送され毎回新曲使う傑作アニメが完結。普通の女の子が母の再婚でプリンセスになる筋立てよく、城の生活や新しい家族に馴染む展開が見事。姉のアンバーや魔法使いセドリックなどサブキャラも充実し大成…

中川明紀 / ソウルフード探訪 東京で見つけた異国の味

2018年5月23日初版 平凡社 モルドバ、エチオピア、ラオス、ブータン、コロンビア…。都内の専門食堂や大使館を訪ねて、世界のふるさとの味を聞いてもらう食レポエッセイは、各国人コミュニティや彼らの素顔、生い立ちなども窺え興味深い一冊。

ヌトミック / お気に召すまま

2019 年5月14日19:30 こまばアゴラ劇場 シェイクスピア作をプロレスっぽく大胆アレンジもバズノーツやデスロック、三条会ほどのインパクトなし。深澤しほら魅力も青年団の客演陣生かせず惜しい。台詞の堅さそのままで窮屈、もう少し突き抜けて欲しかった。

小田中直樹 / フランス現代史

2018年12月20日初版 岩波新書 ドゴール、ミッテラン、シラク、サルコジら政治中心に解説し世論の変化くっきり。レジスタンス評価され左翼陣営強く国有化政策も推進した戦後から移民排除唱える国民戦線台頭まで興味深い動き。文化面の言及欲しい。

本谷有希子 / 静かに、ねぇ、静かに

2018年8月21日初版 講談社 タイトル頭文字通りSNSモチーフの3作集めた短編集。SNS依存者たちの悲喜劇はシニカルな展開でらしさ発揮。LCCでマレーシア旅するアラフォー3人組のダメっぷり見事。ネットショッピング依存症の妻も迫力。

子供鉅人 / SF家族

2019 年4月26日20:00 rusu(東京・目黒) 目黒不動尊近くの一軒家で観客15限定1ヶ月ロングラン公演は、空間活用も絶妙なSF傑作。宇宙さまよう訳あり4人家族描き大成功。観客移動させての別室でのクライマックスでキキ花香演じた娘の辛い過去見せ感涙。

ホエイ / 喫茶ティファニー

2019 年4月19日19:30 こまばアゴラ劇場 待望の新作は意外に社会派作品。渋谷から数十分の町のゲーム機ある喫茶店の在日コミュニティの苦難を描き強烈。就職に苦労し恋愛に失敗しねずみ講に走るヒロインを中村真沙海が好演。元カレ役で尾倉ケントが新境地。

薩摩真介 / <海賊>の大英帝国 掠奪と交易の四百年史

2018年11月9日初版 講談社選書メチエ 海賊の力を利用してスペインとの覇権争いに勝つ英国の16世紀からの政策の変遷と海賊たちの生き様描き面白すぎる海の世界史。海軍と連携したバッカニア、キッドの悲哀、意外に民主的な海賊内の体制も紹介して新鮮。

玉田企画 / かえるバード

2019 年4月5日19:30 小劇場B1 チラシに著名人の妄想感想載せた新作公演は出会い系運営者たちの群像劇。脅されキャラで玉田怪演、深澤しほが汚れ役好演し、恋愛感情や対立描く場面巧いが、皆が繋がるご都合主義に難。木引優子の元カレ役も厳しい。

財団、江本純子 / ドレス

2019 年3月29日19:30 ギャラリールデコ6F 遠藤留奈&内田慈起用の4人芝居は、江本純子&本谷有希子を彷彿のゼロ年代に躍進した演劇人描く小劇場群像劇で異様な傑作。女優たちの役得るための奮闘の舞台裏も赤裸々にみせ、遠藤の突き抜けた暴走キャラに脱帽。