森功 / 悪だくみ 「加計学園」の悲願を叶えた総理の欺瞞

2017年12月15日初版 文藝春秋
バブルの実像描き冴えた仕事見せた筆者が加計孝太郎ら安倍人脈の暗躍追いかけた新作は大宅賞受賞も納得の迫力。米国留学時代の接触から千葉科大での無謀な取り組みも明らかにし興奮。森友も触れるも加計部分が最高。

前田司郎 / 愛が挟み撃ち

2018年1月25日初版 文藝春秋
久しぶり芥川賞候補作は不妊に悩む夫婦の突飛な解決策が三角関係もあり違和感抜群も最近の荒れ気味な作風から一変、文章のきめ細かさに感嘆。俊介の打算的心理面白く、才能あっても伸び悩む水口との交流も興味深い。

藤田貴大 / おんなのこはもりのなか

2017年4月13日初版 マガジンハウス
「an an」連載の女子への偏執愛綴ったエッセイ軸に「口内炎を見たい」「鼻水に取り憑かれる」変態エピソード満載。劇団公演の最中も続いた連載に臨場感も。劇団関係者を実名で登場、欧州ツアーの様子も興味深い。

石井遊佳 / 百年泥

2018年1月25日初版 新潮社
チェンナイの日本語学校で働くだめんず女性の過去現在を妄想入れ描いた異色作は授業内容などリアル。美少年デーヴァラージの過酷な生い立ち紹介もシニカルに描き、特異な家庭で育った2人の接点際立ち芥川賞も納得。

若竹千佐子 / おらおらでひとりいぐも

2017年11月16日初版 河出書房新社
芥川賞受賞作は「ひよっこ」な60年代に上京した過去もつ74歳の桃子さん主役に、夫の死後の生活を詳細に描いて会心。詩的に挟む東北弁も効果的で、終盤の墓参りでの走馬灯的に過去の桃子さんに出会う展開に感嘆。

大西康之 / 東芝解体 電機メーカーが消える日

2017年5月20日初版 講談社現代新書
東芝NEC、シャープ、ソニーパナソニック富士通など近年巨額赤字喫した電機大手の負ける理由、リストラの現実を描き興奮。経営者の判断ミス、過去の繁栄の記憶と多角化事業の失敗に焦点当てて悲劇浮き彫り。

木村元彦 / 無冠、されど至強 東京朝鮮高校サッカー部と金明植の時代

2017年8月15日初版 ころから
70〜80年代に国内最強といわれた東京朝高と金明植監督を描き出色。出生地の枝川から辿り、総聯と民団で揺れる状況詳述も意義。十条ダービーを戦い黄金時代を築いた帝京の古沼監督ほか強豪校指導者の証言も効果。